「F8Meetup」参加メモ
Developer Circle Osaka主催、F8参加報告会「F8Meetup」に参加しました。
※F8とは、年に1回開催せれるFacebook社の Developer向けカンファレンス。
Meetupで共有のあった内容は大きく3点。
- 「F8」について
- 「F8」と同時期に行われた「FacebookDeveloperCirlceのLeadサミット」について
- シリコンバレー、サンフランシスコ現状報告
「F8」について
「カンファレンス」と聞くと、“学術・技術系” か “アイデア・サービス系” のいずれかの内容を想起しますが、F8は後者がメイン。
参加者はエンジニアだけではなく、ビジネス領域の方々も多くいらっしゃったそう。
そこで話されたkeynote speachの概要や展示ブースの雰囲気、あとFacebook社を見学されて感じた雰囲気など伺えたので、以下に記載します。
パーティーのような雰囲気
ブースでは実際にプロダクトを体験できる。
keynote speechの概要・展示ブースの雰囲気
今回のMeetupで共有のあった内容は以下の通り。
デザインの刷新
実際にFacebookを利用されている方はお気付きかもしれませんが、青々したデザインから、白基調のデザインに刷新されています(デザイン刷新は数年ぶり...というお話だったような...)
デート機能
色々と話題になった機能。最大9人の人たちと出会いの機会が創出される(かも)というもの。
『portal』のリリース
離れた人たち(例えば家族)ともつながることができるコミュニケーションデバイス。親しい人たちとの関係性をより強めることができる。
目玉は「通話機能」「カメラ」で、例えば通話中に席を離れてもカメラが追従し、コミュニケーションが分断しない。
『Instagram』の機能拡張
クリエイターが(例えば身に付けている洋服の)商品のタグ付けを直接つけることができるように。
こちら、後で調べて分かったのですが、マネタイズ観点で非常に大きな機能拡張のようです。
※記事内の以下は上手な建付け(三方良し:インスタ良し・フォロワー良し・クリエイター良し)だなぁと
むしろ重要なのは、クリエイターが身に着けているのは何か、それはどこで売っているのか、といったような質問が何度も繰り返されるのを防ぐことだという。
『Oculus Quest』のリリース
OculusはFacebookのVR開発部門が開発・販売するVRヘッドマウントディスプレイ。そのシリーズ最新プロダクトの紹介。
PC不要。本プロダクト単体でVR体験ができるため、写真のように自由に動き回ることが可能で、遊び方の幅が増えるとのこと。
Facebook社の雰囲気
実際に社内見学をされた感じたことなども共有いただきました。
印象的だったのが、社員のマーク・ザッカーバーグに対する信頼感。
Facebook社では、マーク・ザッカーバーグに直接質問をする場が頻繁に持たれおり、その質疑応答の内容やスタンスに触れることで、「(ここまで考えているんだ)やっぱり彼はすごい」となるようです。
FacebookDeveloperCirlceのLeadサミット
ざっくりとは、世界各国のコミュニティのリーダーの集まり。
リーダー同士で、各コミュニティでの取り組みや、運営するうえでの悩みやノウハウのシェアがされるそうです。
印象的だったのは韓国の話し。
実際に話をした韓国のリーダーは他にもエンジニアコミュニティを掛け持ちしており、FacebookDeveloperCirlceとの親和性が高くシナジー効果がある(と、韓国のリーダーが言っていた)という話や、当日ハッカソンが行われていたそうですが、出場権を得た人たちの出身地では韓国は20名(※日本人は1名)と多く、「韓国はプログラミングが強い」という印象を持たれたそう。
シリコンバレー、サンフランシスコ現状報告
続いて、実際にシリコンバレーを訪問した感想やシリコンバレーの状況について共有いただきました。
F8とは別のイベント。Google主催のカンファレンス「Google I/O 2019」
感想は...
- 街を歩くと二人に一人はアジア人(目についた範囲で)
- 国際色豊か
- 有名企業のオフィスは田舎街にあるので注意しないと見落としそう
- ライドシェアをよく目にする(実は今、景観・事故の観点で問題になっている)
- AmazonGoやっべーぞ etc...
実際にシリコンバレーを訪れて感じたことまとめ
充実した教育機関
現地の大学を見学する機会もあり、実際に訪問して感じた雰囲気や、現地の学生から聞いた情報なども共有いただきました。
日本人留学生の多くは東大・慶応・早稲田出身レベル(ですよねー)。
学校の運営方針が特徴的で、学生からのフィードバックを積極的に取り入れ、その声をどんどん改善に活かされるそうです(日本とは大きく異なる?)。
社会問題
サンフランシスコの都市価値が上がる一方で、土地代・物価の高騰や格差の拡大、治安の悪さなどがあり、住民の53%が移住を真剣に考えているとか( “テクノロジーがもたらす不便” という話の切り口が、個人的にはとても刺さりました)。
最後に(Meetupに参加してみた感想をつらつらと)
最近、会社で海外視察に行かれた方の話を聞いて、何となく海外に興味を持ったことが参加動機でした。
なので、少し前なら参加しなかった類のイベントですが、参加して良かったなと感じました。
新しい情報に触れるとそれをトリガーに他のことにも興味を持つようになるし、今回のような“体験談”系はネットやニュースで見るより頭に入ってきやすい気がします。
加えて、新しい情報に触れると、芋づる式?に別の情報にも興味を持つようになり、インプットの幅が増えていく感覚を覚えました。
具体的には、「シリコンバレーで起きている社会問題」という話を聞いて、以下のような記事にも目を通すようになったり。
別では、今回のMeetupは学生の方お二人が運営されていたのですが(うち一人は起業済み)、会全体に漂うフレッシュ感のようなものを心地良く感じていました。
単にお二人が若い...とうことではなく、自ら得た情報をすぐにアウトプットしたり、それに興味のある人たちがコミュニケーションをとる場をすぐに作っちゃうフットワークの軽さのようなものがとても良かったです。
Developer Circle Osakaでは「Google I/O 2019」の報告会も企画されているとのことでした。こちらも気になる!
※参考:「F8」について他メディアでもまとめ記事がありましたので、リンクを張っておきます。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/02/news019.html
https://ja.newsroom.fb.com/news/2019/05/f8-2019-day-1/
「Legacy Meetup Kyoto」参加メモ
Sansan主催の勉強会に参加。
非エンジニアでも多くの気付きが得られる勉強会でした。
技術的な話しはこのブログでは書けないので(不勉強ゆえ話しについていけず...残念)、詳細は登壇者の方々の資料参照ください。
▼加畑博也さん / Sansan株式会社
SansanはCMのイメージもあり何となく新しいイメージだけれど、実はそこそこレガシーなシステム。技術的負債に立ち向かった実例紹介。
▼山本寛子さん / ヤフー株式会社
全社的な技術移行プロジェクト。リリース直前にプロジェクトへアサインし、既存システムや業務知識を学びながら技術移行をしなければならない難易度の高さや、全社的プロジェクトゆえにハンドリングが効き辛いことの難しさなど、数々のハードルがありながらも、それらを乗り越えた体験談。
アプリケーションエンジニアながらも、インフラレイヤーのレガシーに立ち向かう「やる人いないから俺がやる」というマッチョな実績のお話し(自ら火消し役を買って出た一方で、果たして自分と同じことを他の人がするのか?そもそも全レイヤーを見る必要があるシステムってどうなの?と、次への課題出しもされています)。
登壇者の方々のお話しを伺って、感じたことは大きく3点。ヘンナニホンゴですが、以下のような感じ。
- やるかやらないかだけ
- やればやりようはある
- やれるように合意とる
やるかやらないかだけ
目の前にある技術的負債に疲弊しながらも、色々な理由でレガシーシステムに着手できない。負債が自然解消することは無く、いつか絶対清算しなきゃいけない。でも出来ない(...のループ)。
もしそのような状況に陥った時、私がぱっと思いつくのは「やれない理由を潰していくこと」ですが、登壇者の方々のお話しは「やれる要素を積み上げていく」というものだったと理解しています。
加畑さんのお話しで言うと、レガシーな現状が何となく良くないのはみんな分かっているので、まずは今起きていることを計測・定量化して「見える化」し、課題に取り組めるような状況を作る。
對馬さんは、レガシーになった経緯を理解したうえで、解決のために何が必要かを洗い出す。そのうえで、必要なことを「(一旦)全部、自分でやる」。
課題が山積する中で、とりあえず走り出せる状況を作られていました。
やればやりようはある
プロジェクト終盤でのアサインとなった山本さんは、分からないことは、社内wikiを活用したり、他のチームの方を頼るなど(本家のgithubでissueを挙げていた人が実はyahoo!の社員さんだったとか!)、ご自身の置かれている環境をフル活用しつつ、何とかプロジェクトを推し進めていたそう。
また、マッチョ對馬さんは、巨大なレガシーシステムを目の前にするも「巨大だが、個々の問題は解決できる」と状況を認識し、これまでのエンジニアが残したドキュメントを参考に断片的な情報を紡ぎ、分からないことは詳しい人に聞きながら、ご自身の知見を溜めていったとのこと(「大体の問題は過去に事例がある」は個人的に目から鱗的名言)。
やれるように合意とる
ざくっとは周囲の巻き込み方の話ですが、これは加畑さんが分かりやすく言語化されていました。
ステークホルダー、開発メンバーとの合意はマストで、前者については正しい情報を挙げることに注力し、後者については「なんのためにやるのか」を繰り返し伝えることで、関わる人たちを巻き込んでいった、とのことでした。
伺ったお話を思い出しながら(感想)
自社開発と受託開発とでは前提が違うのかなと想像しつつ、レガシーシステムに立ち向かう皆さんのお話しに、非常に勇気付けられました。
その上で印象的だったのは、皆さん(?)楽しみながら難局に立ち向かっていること。
山本さんは、明示的に「新しい言語に触れることは楽しい」と仰っていたし、便利で新しい技術をキャッチアップすることで変化対応力も付くと仰っていました。
スキルや技術は陳腐化するもの(なので追いかけるのはナンセンス)、という言葉をどこかで聞いたような聞いてないような気がしますが、新しい技術を追いかけ続けることは純粋にワクワクするし、そのワクワクを尖らせることで、現状に満足せず(悲観せず)新しいことに前向きに取り組めるマインドやスタンスが身に付くのかなぁと感じました。
ぼんやりと、エンジニアの志向性に(改めて)触れることができた。そんな勉強会でした。
『日本進化論』読書メモ
社会課題(人口減少、超高齢社会、社会保障の破綻等)の共有。その解決のキーがテクノロジーであることが、具体的な施策案も添えて書かれています。
はじめに
よく見聞きする悲観的な未来予測。本当にそうなのか?
「平成の30年余りの間に日本は衰退した。」
「今後は斜陽国家として落ちぶれていく。」
よく聞く未来予測、本当にそうなのか?もう一度議論する必要があるのではないか?
確かに失われたものや反省すべき点はあるけれど、そこに囚われるあまり、今の日本が抱えている問題の本質や解決の糸口が意外なところに潜んでいることに気付き辛くなっているのではないか。
キーワードは「ポリテック」=ポリティクス(政治)+テクノロジー(技術)
ポリテックが目指すこと
政治とテクノロジーの融合が、今後人々が幸せに暮らせる社会を創るうえで重要になる。
社会課題の解決にはテクノロジーの活用は必須。政策が決められる過程で、政治・経済等の論点の中に「テクノロジー観点で見るとどうか?」を加える必要がある(医療におけるセカンドオピニオンのようなイメージ)。
なぜポリテックが必要なのか
理由は、テクノロジーの影響力の強さ。現代は、社会・政治・国際関係などあらゆる分野で、テクノロジーが破壊的なスピードで大きなインパクトを与える時代になっている。
例えば、都市部と地方の格差。都市部に人が集まる一方で、地方は人口が減少する状況で、両者の間が分断され格差に繋がっている。
具体的には、地方は水道や電気といったハード面や社会制度などのソフト面を維持するためのコストがどんどん増えていく。例えば、高齢者が数人しか住んでいない限界集落に東京と同じインフラを整備するのは効率が悪い。
ここでテクノロジーを上手く活用すれば、サービスを複製するためのコストが安くなり、地方への効率的なインフラ提供が実現する。結果、格差が是正できる(ex. インターネット投票)。
そういった、現状のスマホなどのコモディティハードウェア上で動作するソフトウェアテクノロジーは、ハードウェアへの大規模な投資が難しいという地方のハンディキャップを埋めてくれます。
喫緊の課題は「人口減」と「高齢化」。
それを解決するツールがテクノロジー。
- 通信:ダイヤルアップ→ADSL→光
- 無線:3G→4G→5G
- 装置:メインフレーム→ミニコン→パソコン→スマホ→エッジデバイス
- 母艦:サーバーサイド→クラウド
- 表層:パンチカード→CUI→GUI→Web→アプリ→エッジデバイス
- 知能:分岐→回帰と近似→特微量選定→特微抽出自動化
限界費用ゼロ化
これらのテクノロジーの進化が導き出す方向性は「限界費用ゼロ化」社会。
「限界費用」とは、財やサービスをある生産量から一単位多く生産するときに伴う、追加的な費用のことです。要はすでに開発や製品が終わっているプロダクトやコンテンツを量産するときにかかる費用
限界費用の抑制は、以下3点で整理できる。
- 仕事のAI化
- 事業のプラットフォーム化
- インフラの再活用
仕事のAI化
ぱっと想起されるAIに代替される仕事の他にも、例えばイラストの着色といったクリエイティブ領域でもAIが代用する技術がすでにある。
事業のプラットフォーム化
プラットフォーム化とは、「場を作る」こと。例えばiPodはハードとコンテンツがセットになることで収益が上がりやすい状況を生み出している。他にもYoutubeは場作りのみでコンテンツは作っていない。
これは、顧客の囲い込みだけではなく、家賃や人件費などのコスト削減も実現する。
インフラの再活用
例えばSkype。ネットにタダ乗りしてサービスを提供する(自社でインフラを構築しているわけではない)。
これらの根底にあるのは、初期投資を可能な限り抑制し、人間の介在を減らすことで人件費を削減するという、ごくシンプルな発想。
労働の効率化
日本の課題「少子高齢化」。これに抗う鍵になるのが省人化と自動化。テクノロジーを活用して、これを進めるべき。
これまでの(工業生産を前提とした)社会は、労働を「標準化」することで回っていたが、今後は多様性を前提にした「パラメーター化」が必要になる。
パラメーター化とは、個々人の最適な形の解決策を適用することで、社会を回していくこと。
また、別では生産性の低さという問題もある。日本の生産性の低さは問題視されているものの、そのことに対するリソース投下が十分になされていない(未来の課題解決にに投資できない)状況にある。
リソース投下の課題は大きく2つ。
- シニア層と過去へのリソース投下があまりにも重く、未来に投資できない。
- インフラ投資があまりに重く、都市集中型の未来しか描けない。
前者について、家族で例えると、収入よりも多いお金を借金をしながら祖父・祖母に回し、若い人たちは「なんとかしのぎましょう」という状態。世代間の投入費用のリバランスが必要。
後者については、地方に対するリソース投下の問題。地方から都市にどんどん人口が流出する。そうなると住む人一人当たりにかかる公費は地方の方が多くなる(ex.東京都目黒区が一人当たり年間34万円、一方島根県海士町や気仙沼のそれは250万円)。結果、極端に都市に集中して生活するしかない都市セントリックな未来へ突き進んでしまう。サスティナブルな未来を創るには、このインフラコストをいかに下げるかが重要。
「働く」ことへの価値観を変えよう
「働き方」アップデートに対して障壁になる「固定化された価値観」
例えば「地方には仕事が無い」という地方と都市の格差への悲観や、不必要に複雑化された承認プロセスやデジタル化されていない固定化された価値観から生まれた業務環境(ex.行政)。そして「障がい者」。障がい者は仕事で自己実現出来ないという価値観が根強く蔓延っている。
「固定化された価値観」が生まれた背景
20世紀に形成され、機能したもの。終身雇用を前提とした「安定のレール」が全員の幸福を保証いていた時代に生まれたもの。
これは高度経済成長といった長期にわたる業績右肩上がりが前提なので、GDP減少傾向にある現状にはそぐわない。
終身雇用・年功序列制の限界
しかしこの価値観は、実は半世紀程度の歴史しか持たない。戦後の工業を基礎とした社会では、労働者の多くが同一のインフラに乗り、同じ信念を持ち、同じ方向に成長していくことが生産の効率化とコスト最小化に効率的だった。
しかし、工業化から情報化への転換を契機に、この価値観が立ち行かなくなっている。
社会変化の3つのキーワード
そのような社会変化の中で、重要なキーワードは3つ。
- 限界雇用ゼロ化
- インフラ撤退社会
- ダイバーシティの実現
限界費用ゼロ化
「限界費用」とは、財やサービスをある生産量から一単位多く生産するときに伴う、追加的な費用のことです。要はすでに開発や製品が終わっているプロダクトやコンテンツを量産するときにかかる費用
昔は限界費用と限界効用を天秤にかける必要があった。その結果生まれたのが画一的なデザインによる大量生産(=効率化)。
しかし、所謂情報化社会の到来により、ソフトウェア産業・インターネット産業では、全てのことが簡単にコピーできるように。結果、生産手段の民主化が進み、生産者と消費者の境界が曖昧になる。
インフラ撤退社会
過疎化が進む村落では巨大インフラの構築・維持は無理。個別の状況に応じた最適なサイズのインフラに置き換える必要が出ている。ネットワークインフラさえあれば、地方でも不自由なく暮らせることができる。
ダイバーシティの実現
ここで言うダイバーシティ(多様性)とは、
性別・人種・年齢・障がいまでを含めた、幅広い人間のあり方を受け入れるという意味です。
テクノロジーの発展が多様性を促進する。これまでも、メガネのようにテクノロジーで身体能力を拡張してきたが、今はさらにそれぞれの状況に最適化された技術的サポートが可能になっている。
例えばコミュニケーションロボットの『OriHime』
テクノロジーの補助が介在することで、障がいもある種のパラメーターの違いに過ぎない状況になり得る。
労働環境は「AI+BI」と「AI+VC」に二分される
一部の地域に偏って投下されている多額の公費を、均等に再分配かつ各地域の人口に応じて個別最適化された規模でインフラが提供できれば、ある種のベーシックインカムのような再分配の仕組みが生まれる可能性がある。
AI+BI
そうなった時、多くの人はAIの指示の基、人機一体となって指示に従い、短時間の簡単な労働をするようになる。これが「AI+BI」的な働き方。
例えばUberのビジネスモデルとベーシックインカムの組み合わせ。地方の交通インフラとして重要な役割を担う自動配車サービスにベーシックインカムの資金を投下するかたち。
事業単体での黒字化は難しくても、料金が低ければ雇用も生まれ、公共的なインフラの役割も担える。
AI+VC
社会を発展させるためのイノベーションに取り組む働き方。ごく少数の人が担う。
両者は対立しない
これは、ある課題にアプローチする際の役割分担。ビジョンを具体的なアクションに落とし込む人と、そのアクションを忠実に実行する人。
どちらが優れているということではなく、どちらも必要(落合氏も両方やっている)。
大切なのは、組織の論理に囚われず、コストを最小化し利潤が最大化されるよう、個々人の判断で動くこと。
本書では、以下2つの理由から「高齢者ドライバー問題」が例に取り上げられています。
3つのアプローチ
この問題を3つのアプローチで解決する
- ドライバー監視技術
- 自動運転技術
- コンパクトシティ化
事故の直接的な要因は高齢者の身体的・認知的能力の低下にある。その解決には状態を常時チェックする①のシステムが重要だし、②③が有用なのも言わずもがな。
孤立した子育てから脱却するために
次に子育ての問題。いま子育てをしている親の状態は「アノミー」である。「アノミー」とは、社会の中で排他性が強まり、帰属性が消失すること。
核家族化により、社会と個人の距離が遠くなることで、子育てがしにくくなってしまっている。
解決の方向性は2つ。
- 手が空いている人に子どもの面倒を見てもらう
- 隣人と共同で子育てに携われる地域コミュニティの再構築
例えば、高齢者が勤労者を支えるという発想の転換。
一般的に、小学校の6年間が大変なので、ここを行政や企業がサポートすることを目指してみてはどうか。
今の教育は生きていくために大事なことを教えているのか
現在の日本の高等教育は、標準的な知識を効率的に詰め込む「標準化」を目的としたもの。
そんな中、世界中の教育機関が学生数から教育環境、研究分野から産業収入に至るまで、あらゆる観点から順位付けされる World University Ranking 2019では、東京大学が42位、次いで京都大学が65位。それ以外は100位以下。日本の教育は先進国とは言えず、この現状を打破する必要がある。
日本の教育革命のための重要な指針は、教育の「標準化」から「多様性」へのシフト。
求められる学び方は大きく2点。「リカレント教育」と「Ph.D(博士学位)の教育」。
リカレント教育
社会人の学び直しと、キャリアの促進・転換を促すための教育。
Ph.Dの教育
過去に事例の無い問題を自ら設定し、その解決を考えるスタイル。言われたことを学ぶのではなく、「自分は今、何を学ばなければいけないのか」を客観的に考えながら問題を解いていく。
一方でこの実現は一朝一夕にはいかない。現実的には段階的にシフトしていくかたちで、Ph.D的な学習と従来の詰め込み型学習を両立させる。
具体的には、大学入試が終わった時点でこれまでの勉強の価値観を全て捨てる「アンラーニング」。これを経ることで、「あらゆる前提は偽の可能性がある」という懐疑的なマインドセットを身に付けることができる。
本当に日本の財源は足りないのか?
社会保障費は本当に増え続けているのか?
財政問題における最大の懸案のひとつが社会の高齢化に伴う社会保障費の増大。
新聞などによると、社会保障費は2040年度に190兆円、2018年の1.6倍になると報じられている。
しかし慶應義塾大学・ 権丈善一教授によると、これは誤報。将来の社会保障給付費は対GDP比で見るべきであると。
対GDP比で見ると、2040年度のそれは、現在の1.1倍。際限なく拡張して制度が崩壊する、といった一般的なイメージとは異なる。
社会保障費の対GDP比の増減
将来への変化予測を見ると、2000年から2040年にかけて 15%から 24%に急増している。
但し、詳細を見ると2000年から2010年が急増。2010年以降はなだらか。2025年以降再び増加に転じるも、15年間で1.11倍程度と、その変化は穏やか。
▼出典:東洋経済ONLINE
ポイントは「医療」と「介護」
前出の2025年以降増加する2~3ポイント程度の負担を上手く解消できれば、少なくても現状維持は可能。
社会保障費の内訳。社会保障費のうち「年金」「医療」「介護」「子ども・子育て」の占める割合をみると年金と医療の占める割合が大きいことが分かる。
▼出典:東洋経済ONLINE
将来的な変化として、年金は微減傾向、子育ては現状維持。増加するのは医療と介護のみ。
これからの20年、この2つのコストを抑える施策が重要になる。
ICTテクノロジーの導入でどれだけ人件費を抑えられるか。介護作業の完全自動化は難しいため、介護を補助し効率よく進める仕組みの構築が現実線。
『Telewheelchair』
digitalnature.slis.tsukuba.ac.jp
具体的な取り組みの一つが「Telewheelchair」。車椅子一台につき介護士一人が付き添う非効率さを解消するためのもの。自動運転と遠隔操作がキー技術。
実際に現場で試運転を重ねると、介護される当事者のお年寄りからは高評価だそう。
政府系投資機関の活用
一方でマクロ視点から見ると、テクノロジーによる省人化と自動化は財政にとって良いことばかりではない。
人間が担ってきた業務が機械に代替されると、所得税による税収は減少。それによりデフレへ向かう可能性もある。
加えて、企業の業績は上向くが法人からの税収にそれが反映されるかは未知数。
そのため、これからは税収で財政を支えるのではなく、政府系投資機関を通じて、国と企業がイノベーションの成果を分け合う発想が必要。
具体的には、テクノロジーによる省人化・自動化に成功した企業は市場における優位性が確立され株価が上がる。政府系投資機関はそこに投資し利益を得る。これにより税収とは別の財源を確保できる。
すでに年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などが存在するものの、今後は投資先企業の選定について、将来を見据えたより高度が判断が必要になる(単純な営利目的の投資は行うべきではない)。
デンマークの事例
一方で税収を増やすことも重要。日本とよく似た人口構成比のデンマークは、高齢化社会でありながら、(日本とは違い)経済成長を実現している。
実現の要因は「産業構造の転換」と「行政の効率化」。
産業構造の転換
製造業が主要な日本とは異なり、デンマークでは主要産業を流通・小売業へと転換し始めている。ゼロからモノを作るのではなく、既製品に価値を付与する産業へシフトしている。
行政の効率化
テクノロジーの活用、ビッグデータの活用。医療分野の電子化などを推し進めている。
日本の根底にある「シルバー民主主義」
実はこれが根深いのでは?と落合さんは投げかけます。
60歳以上が有権者全体の約4割を占める歪な構造。「テクノロジーへの投資をします」というよりも「介護保険料を安くします」と言った方が受け入れられやすい実情があるり、未来への投資がし辛い状況にある。
人生100年時代の「スポーツ」の役割
最後にスポーツ。今、スポーツの目的が変化している。これまでは「身体的な健康の増進と娯楽が目的」だが、これからは「ストレス解消、コミュニティ形成、予防医学的効果が目的」となる。
そんな中、我々日本人は「忙しい」「場所がない」といった理由から、なかなか運動をしない傾向にある。
その解消には、所属する組織が運動・スポーツのための時間を強制的に確保し、運動の習慣を制度として生活の中に組み込むことが考えられる。また、場所の問題はパブリックスペースの整備を急ぎつつ、VR・AR技術による空間の効率的な活用など、狭い空間でも運動が可能になるテクノロジーの活用が期待される。
最後に所感をつらつらと
本書最後「おわりに」の章で、落合さんは以下のようなことを書かれています。
依然として「若者を自由に」すること、すなわち未来への投資ができていないことが、僕は非常に悲しいのです。
繰り返し本文を通してお伝えしてきましたが、日本社会はポリテッックをテコに課題解決できる余地が数多くあります。
ポリテックを推進していくためには、日本全体にはびこる閉鎖的で後進的なマインドセットを変えていく必要がある
個人が備えるべきは、今までの常識+固定観念にとらわれない柔軟でフラットな視点
どれもポジティブで共感できるコメントばかり。
今後の社会のあり方が語られる際、少子高齢化をベースにした悲観論が多いのは事実だと思います。
しかし、本書ではまず事実を俯瞰的に捉え(事実がそうなるに至った歴史や経緯を正しく理解し、その背景にある“意味”を捉え)、その上で具体的な解決策が提示されています。
反射的に悲観を語るのではなく、テクノロジーを使ってそれをどうひっくり返すか。
落合さんのアプローチは、日本社会という大きなテーマは当然ながら、属するコミュニティあるいは個人といったレイヤーでも、日々生まれる課題ときちんと捉え、どう(好転に向けた)アクションをとるかといった、日常生活を送るうえでも有用な気付きを与えてくれるものでした。
「カンブリアナイト19京都」参加メモ
2019年二発目の参加イベントはカンブリアナイト。
テクノロジーやサービス提供者のピッチが、フランクな雰囲気で聞けるイベントです。
※カンブリアナイトの説明は、過去の参加ブログを参照ください!
今回は4名のスピーカーが登壇(中にはCES出展者も!)。
ピッチを聞いていたオーディエンスから支援・サポートを申し出る場面もあり、本イベントが目指す「新たなコラボレーションの可能性」を目の当たりにすることができました。
ピッチテーマ、登壇者は以下の通り。
- 「日本初の“母乳分析”サービス」荻野みどりさん(株式会社Bonyu.lab)
- 「ヘルスケアアプリのデータコミュニケーション」齋藤恵太さん(Goodpatch Anywhere 事業責任者サービスデザイナー)
- 「食の個別最適化の可能性」服部慎太郎さん(株式会社スナックミー)
- 「“リアリティ”のある触覚体験―認知科学の視点からー」平尾悠太朗さん(早稲田大学大学院)
※Facebookイベントページから抜粋
ブログでは4名のピッチを2名ずつに分けて紹介します。
本記事では、荻野さんと齋藤さんについてです。
母乳のクオリティをより良くするお手伝いをする『BONYU』
母乳の栄養素を科学的に分析し、ママに必要な栄養・食事のフィードバックがもらえるサービス。
ベースにあるのは母乳絶対主義ではありません。
せっかく生成される母乳のことをもっとよく知り、子育てサポートを目指すサービスです。
サービス概要はこちらの動画をご覧ください。
荻野さんのバックグラウンド
CEOの荻野さんは、ブラウンシュガーファーストというオーガニック食材をスーパーやコンビニなどに卸す事業も手がけられています。
こちらの事業は道筋が立っているためメンバーに運営を任せ、ご自身は新事業に取り組むべく『BONYU』を立ち上げられました。
CESに出展
毎年1月にラスベガスで開催されるCESにも出展されました(「母乳」というユニークな切り口もあり、会場では一定数の目を惹いていたのではと想像します)。
母乳育児の現実
海外でも母乳育児の関心は高く、アメリカでは2年間の母乳育児が推奨されているそうです。一方で出産後2ヶ月で職場復帰する方が多く、出産後半年経って母乳をあげられているママは22%しかいないのが現実。
比率こそは異なるものの、母乳育児ができない状況は日本も同じ。
実は誰も知らない「理想の母乳」
「母乳」に関する論文やデータは意外と少ないそうで、『BONYU』は科学的に数値化された「理想の母乳」を追い求めます。
「理想」は成分ベースで定義するのではなく、例えばママのライフスタイルや赤ちゃんの月齢・健康状態までもが考慮されたもの。
直近では、ママと赤ちゃんのライフログの取得を実現したい!とのことでした(まだモックアップですが、赤ちゃんのウンチの画像を撮り AIで分析する...という非常に興味深いお話も聞けました)。
正式版プロダクトのローンチ、さらに●●も!?
センシティブな内容も含まれるので詳細は伏せますが、正式版プロダクトのローンチ時期(※現在はβ版)や、さらなるマーケット拡大を目指したお話しも聞けました。
会場では、サポートに手を挙げる方との出会いもあり、今後の事業ブーストへの期待感が高まるピッチとなりました。
「ラバブル」なプロダクト&サービスデザイン
続いてGoodpatch齋藤さんのお話(「prott」いちユーザーとして、目を輝かせながら聞いてしまいましたw)。
選ばれるプロダクトをどうやってつくるのか?
キーとなるのは「直感的なUI」や「新しいUX」ではない。愛されるプロダクトかどうかの「MLP(ミニマム・ラバブル・プロダクト)」、最小限でLOVEなプロダクト。
「これじゃなきゃダメ」という言葉を、ユーザーからいかに引き出せるかが重要。
MVP的にユーザーを知り・プロトタイプを作り・FBをもとに検証を繰り返す...のは大前提。試行錯誤のスピード・量がポイントとのこと。
機能の要・不要ではない。ラバブルかどうか。
ラバブルとは、ターゲットがプロダクトを使った時に、そのプロダクトのストーリーに惹かれること。
「この機能は必要かどうか?」という議論ではなく、「これはターゲットにラバブルなのか?」という議論が必要。
齋藤さん曰く、MVPを作るのは実際には難しい。作り手の思いや意図がベースにあるため、ユーザーがコア部分の体験をすることを邪魔する無駄な離脱ポイントを作ってしまいがち。
そうなるとコア機能の検証ができなくなってしまう。
言葉を変えることの重要性
...とここまで話してきたけれど、実はこれは「MVP」等とやっていることは同じとのこと。
重要なのは「MVP」ではなく「MLP」に言葉を変えること。
そうすることで、前述した「ラバブルかどうか?」の議論が生まれ、より良いプロダクトを作り出すことができる。
最後に
お二人の話に共通しているのは「ストーリー」というキーワード。これは「何をするのか」では無くなぜするのか?大義は何なのか?インパクトはあるのか?ファンは増やせるのか?という観点だと解釈しています。
このことは、日々の業務だけでなく、個人のブランドが問われる昨今において、非常に重要なテーマだなと感じました。
おまけ
烏丸六角の事務所から京都リサーチパークまで、自転車シェアリングサービスの『PIPPA』を利用しました(初!)。
会社の近くに「ポート」(駐輪スペース)があったのですが、最初に訪れたポート付近ではポケットwikiの電波が届かず(電波の届くところまで自転車を運ぼうとしたら警報音が!そりゃそーだ)、別のポートを探すことに。
近くに別のポートを見つけ自転車を借りることができましたが、色々身の回りが便利になっているようで、実は「電波」と「電源」に支配されているなと感じました;涙
エストニア発のロボット技術教育ネットワーク「Robotex」日本支部 MeetUp参加メモ
2019年1月21日、KRPで開催されたこちらのイベントに参加。
Robotexとは
2001年にエストニアで設立した、教育をテーマにしたグローバルコミュニティ。
世界15カ国にリージョンを持ち、STEAM教育(特にRobotics)・アントレプレナーシップ教育に特化している団体です。
AI&Dronesを含むロボット教育とスタートアップトレーニングをテーマに、世界最大級のロボットフェスティバル「Robotex International」やロボティクス・アントレプレナーシップ教育を学べる学校の設立、教員養成プログラムの提供、スタートアップ支援や企業向けのプログラムの提供などを行っている。
※AMP記事より抜粋
Robotex Japanとは
Robotexの日本支部。あの孫泰蔵さんが Master Evangelist(!)。孫さんの運営するVIVITAが設立パートナー企業。
2018年秋から活動を始め、2019年から京都を活動拠点として本格稼動開始。
7月にはKRPでイベントも開催予定とか。
ミッション
現代の詰め込み型教育では、子どものクリエイティビティやアントレプレナーシップ(「主体性」という意味で使われていました)が育たない。これを解決するための場作りやコミュニティ作りをミッションとしています。
日本の課題にSTREAM教育・グローバルネットワークで立ち向かい、既存の枠組みを超えた人々の「共育」を通して創造力・協働力・実践力を高め日本の人材開発とイノベーションに寄与する。
コミュニティ形成を皮切りに、将来的には教育領域へのさらなる展開や、スタートアップアクセラレーションなどを目指します。
メディアパートナー『AMP』(アンプ)
イベントには『AMP』の編集長・木村さんも登壇されていました。
「知的好奇心を増幅させ、インスピレーションを与えるミレニアル世代向けビジネスメディア」を掲げるAMP。
「世の中にはシリコンバレーの情報が多く、それ以外の地域の情報が少ない」と感じていた木村さん。
そこでAMPでは、他国の情報も積極的に発信するように。具体的にはシンガポールやオランダ等に編集デスク設置し、特に注目していたエストニアについては連載を組んで注力的に発信されていたそうです。
さらに、エストニアについては、2015年4月に行われた新経済サミットでターヴィ・コトカ氏 (エストニア政府CIO 経済通信省事務次官補(ICT担当)※当時)のスピーチを聞いたことがきっかけで、木村さんご自身が興味を持つように。加えてエストニアの情報は近年増えていて、2017~2018年頃はスタートアップからの注目が高まったことも相まって、AMPのエストニアシフトはブーストします。
Robotex Japanとの出会い
エストニアに関する情報を発信している中で、色々と問い合わせや相談事が増えるように。
記事の情報を基に対応していたものの、もっと実情を知るため現地へ赴く必要性を感じ、木村さん自らエストニアに足を運ぶことになりました。
エストニアに到着し、移動中(だったかな?)に Robotex Japanの CEO・齋藤さんに偶然声をかけられたことがきかっけで Robotex Japanの存在を知るようになります。
エストニア滞在中の予定には無かったものの、急遽、世界最大のロボットフェスティバル「Robotex International Conference」に参加したり、設立パートナーのVIVITAを訪問するなど、齋藤さんたちと行動を共にすることになります。
その中で Robotex Japanの可能性を感じ、“実際にエストニアの熱狂を知る者”として正式にメディアパートナーになることを申し出、了承が出た末、今のパートナー関係になったそうです。
イベントに参加してみて
CEO・齋藤さん、Community Designer・ピォー豊さんが目を輝かせてプレゼンをされている姿が印象的でした。
齋藤さんが Robotex Japanに JOINすることになった原体験のお話しも聞けて、とても共感が持てました。加えて、メンバーの皆さんの“人を巻き込む魅力”のようなものを感じました。
欲を言えば、収益性(※)や持続可能性、ポジショニングの観点でもう少しお話しが伺いたかったのですが、タイムオーバーで少しだけ消化不良;汗。
(※)一般社団法人のかたちで運営されていて、政府・自治体の補助金?やハードウェア起業のCSR事業、大学の研究発表の場の提供などで収益を上げられているようでした。
とは言え、若い人たちが一生懸命事業に取り組もうとしている姿には非常に心が打たれました(歳かな)。
京都でもイベント開催予定とのことなので、色々参加してみたいと思います!
ソーシャルイノベーションイベント「Beyod 3.0」参加レポート
2018年12月、株式会社taliki主催のイベントに参加しました。
U25社会起業家のピッチバトルや豪華ゲストのトークセッションなど、とても充実した内容で気付きも多く、“生き方のスタンス”のような気付きが個人的にはあったので、備忘的にブログに残したいと思います。
「Beyod 3.0」とは
今年で3回目の開催。ソーシャルイノベーションや起業がテーマのイベント。コンテンツは以下の通り。
トークセッション
テーマ②『起業という生き方、どん底とてっぺん』
Pitch battle
U25社会起業家たちによるピッチバトル
交流パーティー
ピッチバトルは、主催のtalikiが進めている「タリキチプロジェクト」(※)の中でブラッシュアップしてきた事業計画を、投資家の前でプレゼンし、投資や協業や支援者を募るもの。
(※)タリキチプロジェクトとは、25歳以下の若手を対象に、2ヶ月かけて事業計画を創り上げていくプロジェクト。期間中は現役起業家のメンタリング等、様々なサポートが受けられる。
株式会社talikiとは
社会課題に取り組む人材輩出をミッションに、社会起業家のインキュベーションやオープンイノベーション事業を展開している会社です。
社会課題に興味を持ったり、生き辛さを感じている人が多い一方で、行動を起こす人のモチベーション維持や周囲の巻き込み方にハードルがある。そのハードルを下げたり、後押しを目的としているのがこのイベント。
トークセッション
トークセッション①『テクノロジーと社会が出会うとき』
スピーカーは塚本さん、牛尾さん。モデレーターは中村さん。
左から、中村さん・牛尾さん・塚本さん
塚本さんは、高専卒業→日立入社→(技能オリンピック優勝)→東大進学→起業→世界をフィールドに複数の事業を展開。
牛尾さんは村田製作所に籍を置きながら、(当時その概念もなかった)オープンイノベーションを10年前から実践している、どちらも異色のバックグラウンドをお持ちの方々。
トークセッションはtaliki代表の中村さんの質問にお二人が応える形で進みます。
※以下、ちょっと時間が経ってて記憶が曖昧、かつ命綱のメモ帳も字が汚くて解読不可ゆえ、間違ったこと書いてるかも。悪しからず。
今のような活動をしているのは何故?
牛尾さんのきっかけはキャリアチェンジ。
エンジニアとして村田製作所に転職。当時の村田製作所は既存事業で堅調な売り上げを上げていた会社。
ただ牛尾さんは、現状の延長線上では成長戦略が描けないと感じ、社外に出て、とにかく“新しいこと”を始めようと奔走。
塚本さんは、技術とビジネスとの両方を考えている人が少ないと感じたから。
技術側の人と話しをしても、技術の話しばかりでそれをどうビジネスとして成立させるかを考えている人は少なかった。この両者をつなぐ存在が必要だと感じたから。
課題に対して親和性の高い技術(と、そうでない技術)がある。「VR」は注目されている技術だけれど、例えばLGBTとか高齢者のキャリア形成などはテーマが重過ぎる。
(一方で)相性は一旦置いといて「やってみていけそうだったら続ける(無理そうならやめる)」とは塚本さんのコメント。
例えば、緑内障に対してディープラーニングを活用するプロジェクトに取り組んでいるそえ(けれど、これは課題と技術の相性がトリガーで始まったわけではない)。
テクノロジーと非テクノロジー(例で言う「緑内障」)とのバランスがが大事で、どちらかがドライバーになると上手くいかない。
二人がこれから仕掛けてみたいことは?
牛尾さんは、テクノロジーを持ってる「人」と外部との誘発を促進したいとのこと。
まずは凄い人をたくさん見つけ、その人が社会課題に目を向けるような動きをとりたい。外の人と技術者とをマッチングする場作りに取り組んでいかれたいとのことでした。
塚本さんは、社会解決に繋がるようなテクノロジーを突き詰めることに注力されたい(と仰っていたと理解)。日常にある全てのことがテクノロジーと繋がっているので、課題ドリブンでやりたいことをやっていく。
モデレーターは仲木さんで、家入さん、櫻本さん、大柴さんがスピーカー。
左から、仲木さん、櫻本さん、大柴さん、家入さん
起業する際に大切にしてほしいことは?
家入さんは「原体験」。なぜそれをあなたがやるのか?どういう課題があって、どう解決したくて、それをすることで世界にどうインパクトを与えられるのか?
この問いは、「あなたは誰ですか?」という問いに繋がる。(投資家としては)「まずはあなたのことを教えてください」。
大柴さんからは、家入さんの原体験も大事としたうえで、スタンス面でのコメントがありました。最近よく「何々がしたくないから」という人が多いとのこと。これだとスケールしないし、起業家としては無理だろうと。
櫻本さんは「継続できるかどうか」。何があれば続けられるのか?長い起業家人生の中で迷うことは絶対にある。その中で、自分を奮い立たせられるものが何なのかを知っていると良い。
起業家は孤独でプレッシャーも強く、誰にも相談できない人が多い。大変なときに自分を上手くコントロールできることがすごく重要。
この「継続」というキーワードには家入さんからもリアクションがありました。
これまで見てきた起業家の中で途中でリタイアする人も多い。苦しい時期は誰にでも訪れる。その中で継続できる人は「原体験」を持っている人が多いと。
「自分が分からない」という人に向けて
※確かこの質問はtwitterで流れてきたものを仲木さんがキャッチアップされたものだったと記憶しています。
「自分探しは続いている」「答えは出ないのでは?」というお話しの中で、家入さんのコメントがとても興味深いものでした。
みんな自分の強みとか自分の内側から描こうとしている。そうではなく、周囲との関係性の中でぼんやり境界線を描くようなものなのではないかというお話し。
個人的にこれは新しい視点で、自分のことを考える時には、所謂自己分析的な手法を取りがち(自身との対話のような感じ)だけど、自分の言葉や思考で考えたところで、どこか袋小路感がある。
そんな時、他人から見た自分という視点があれば、新しい発見がありそうだなと感じました。
「起業家はこうあるべき」というイメージがあるかもしれないけれど、実はそうじゃない(そんな話しを)
例えば前出の「原体験」。これが無い人はどすればいいのか?
家入さん曰く、「原体験が大事というのは、僕(家入さん)が言っているだけ」。本当はそうじゃないかもしれない。
続けて櫻本さん。「全ての経験は原体験になり得る」。櫻本さんはオンラインカウンセリングの事業を手がけられていますが、これはご自身の睡眠障害の経験を原体験とされています。
ただ、これは今の事業をやると決めたからこのことを「原体験」として切り取っているだけとのこと。
そもそも「起業」とは何なのか?
家入さん「自分の人生にオーナーシップを持つということ」。
大柴さん「人と雇うこと」(独りでできないことをみんなで達成する)。
櫻本さん「自分の世界を自分で創ること」。
これまで経験した失敗は?
家入さん曰く、日々失敗しているので感覚が麻痺している(笑)。
ただ、失敗と定義するとそのことは失敗になってしまう。上手くいかなかったことも、ずっとリベンジしようと思っているので、それは失敗ではない(過去に上手くいかなかった事業も、今後かっこよく復活させたいと思っている)。
櫻本さんの回答は、「全ての失敗は書き換えられる」というものでした。過去に売り上げが上がらず苦しんだ時期もあったけれど、そのことが血肉になりノウハウが溜まっている。
これから先の話し。今後に期待することは?
大柴さん「大風呂を広げる人が少なくなった」。起業家はもっと夢を語ってほしい。
家入さん「気持ちよくだまされたい」。(大柴さんの話と近いかもですが)若い人の自信に押し切られたい。
櫻本さん「持続可能性を大切にしてほしい」。続けていれば役割が変わり成長するし、いつか大きくなれる。とのことでした。
ピッチバトル
「マネーの虎」ばりに投資家の前で熱弁
登壇者と事業内容概要は以下を参照ください。
ピッチバトルで優勝したのは、「VRカウンセリング」をプレゼンした高校生(!)
ご自身の身の回りで起きたことを原体験としていること、また、今の社会においてニーズが高そうなことが高評価だったのではと想像しています(※審査員のコメント失念...;汗)
最後に
このイベント参加以降、「自分の人生にオーナーシップを持つ」という意識が強くなりました。
当たり前のことではあるものの、組織に属するビジネスパーソンとして日々活動していく中で、やりたいこと・できること・組織から期待されていることのバランスの取り方に迷った(悩んだ)り、将来どう生きていくのかふと考え込んだり、将来に対して漠然と不安を感じたりする瞬間があります。
そんな時、オーナーシップさえあれば、比較的物事はシンプルに考えられるような気がしました。
また、そのうえで重要なのが「行動を起こす」こと。トークセッションに登壇された方、プレゼンされた方々に共通しているのは、(口だけではなく)行動しているこということ。
自分の人生にオーナーシップを持ち、その志向の基、行動を起こし、(継続できるかたちで)失敗を繰り返し、志向なり行動なり業務なり事業なりをアップデートしていく。
これを実践していくことが重要なであり、自分もそうありたいと思いました。
「未来を創る二つの顔 AI研究者トップランナー&企業Game Changer」参加メモ
2019年一発目のイベントは Singularity University Kyoto Chapterの 1周年企画。
このブログでは、二名のスピーカーのお話を一人ずつ、前編・後編に分けて紹介します。
Singularity University(シンギュラリティ大学)とは
シンギュラリティ大学とは、2018年10月に10周年を迎えたグローバルコミュニティ。
世界の大きな課題(Global Gand Challenges)解決を念頭に、10年で10億人の生活を良くするスタートアップを生み出す事を目的としています。
「シンギュラリティ」とありますが、人工知能やAIの文脈で語られるそれとは異なり、飛躍的に発展するテクノロジーをどう使いこなすか?どうやってこの流れに乗るか?をテーマにしています。
また、「University」とありますが、大学ではありません。
創設者は、あの人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏とXプライズ財団CEOのピーター・ディアマンティス氏。
本部がある場所はシリコンバレー、NASAの敷地内。「Google創設者のラリー・ペイジ氏が自転車で立ち寄るような環境」だとか。
2人のスピーカーによる「eXponenital Talks」
今回のイベントは、ビジネスとアカデミアの異なる分野から、二名のスピーカーが登壇。
一人めはANAで新規事業を立ち上げた津田さん。二人めは著書多数(ドミニク・チェンとの対談も!)の中島先生。
「ANA出島式」ラディカル未来創生
津田 佳明さん(ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボ/チーフ・ディレクター)のお話し。
ANAで『破壊的イノベーション』を起こすことをミッションに、新組織「デジタル・デザイン・ラボ(DD-Lab)」を2016年4月に立ち上げ。
DD-Labの立ち上げ経緯や活動内容などをお話しいただきました。
ANAのベンチャースピリットを体現(再現?)した治外法権的組織
今でこそ大企業イメージのANAですが、創業した1952年当時はヘリコプター2機と16人の社員で構成されるベンチャー企業。
その後、60年以上の歳月をかけ国際線事業への参入や全席アクセス可能なレイアウトの導入、自社にとって破壊的存在であるLCCの立ち上げなど、様々なチャレンジを行ってきました。
航空業界でのポジションを確立した一方で、“いつも通りであること”(航空事業の至上命令は「安全運行」)が徹底され、イノべーティブなマインドが持ち辛くなるように。
その中で、今の延長線上にはない新しいことに取り組む“挑戦”を実践する部署として立ち上がったのがDD-Lab。航空事業とは完全に切り離したかたちで、ミッション遂行を目指します。
逆ピラミッド組織
DD-Lab在籍者のうち、ANA出身は数名。バックグラウンドは様々。
色々な人がいる中で、みんなそれぞれやりたいことをやる。
TOPである津田さんはその実現のための調整・サポートに徹するマネジメントスタイルだそうです。
▼参考:ANA・DD-Lab流マネジメント術
DD-Labの取り組み
『破壊的イノベーション』を実践するにあたって、「誰が自分たちにとって破壊的(Disruptive)な存在なのか?」を考えたところ、答えは某猫型ロボットの移動扉。これがあると飛行機は必要ない。
これは所謂「テレポーテーション」のことで、実現に向け東大教授の下に相談に馳せ参じるも、実現までにはあと100年程かかる見積りだとか。
100年は少し先過ぎるので、もう少し現実線で検討し、取り組んでいるのが以下4事業。
2.については、動画撮影や航空機設備点検への活用、「空飛ぶクルマ」官民協議会への参画などが進行中。
3.についても、アストロスケールといった有力宇宙ベンチャーへの出資や、宇宙ビジネスコンテストへの参画などを実現。
4.については、飛行機すら必要としない?旅先にいなくてもそこにいる体験ができるアバター技術を2022年ローンチ目標でプロジェクトが進行中。
さらにこちらについては、2022年を待たず、例えば耳や目や手といった1つ1つの技術を分散させて社会実装することも視野に入れているそうです。
▼参考:アバターに関するイメージムービー
これ以外にも赤ちゃんが泣かないヒコーキや乗ると元気になるヒコーキなど、規定路線に囚われない、自由な発想でかつ社会実装可能なイノべーティブな活動を実践されています。
DD-Labの「成功」の定義は?
これはナビゲーターのJunさんの質問ですが、この質問に対する津田さんの解答は「無い」。
(とある目標を立てて、それを達成した状態を「成功」とするのであれば)DD-Labは短期的な目標を掲げるような組織ではないため、「成功」の定義が無い。
仮に「成功」した状態が定義できるような目標を立ててしまうと、目標から逆算したマインドやアウトプットになってしまい、イノべーティブさを欠いてしまう懸念があり、それは本意ではない。
まとめ
津田さんのアクションは、全てがロジカルで共感値が高いと感じまいした。
ここでいうロジカルとは、想いと行動がまっすぐ繋がっているということ。
自社が今どういう状況で、将来どうあればいいのか?そのためには何が必要で、どういうロードマップを描けばいいのかを考えながら実行に移す(航空事業(屋台骨)とは切り話した場所で未来を創る組織を立ち上げ、未来を創る場所では「自由」を重んじ、調整役に回る)。結果、従来のANAにはなかったイノべーティブな事業が生まれる。
現状維持は即ち死を意味し、提供するサービスなり取り組みなり、何かしらアップデートすることが必須な世の中。
新規事業を立ち上げる立場にあろうとなかろうと、津田さんの「実践者」としてのお話しは非常に興味深く示唆に富むものでした。
今回は事業活動に関するお話が中心だったので、次にお会いできるチャンスがあれば、もっと津田さん個人のお話も聞いてみたいなと思いました(※少しだけ直接お話しするチャンスがあり、ご自身のモチベーションの拠り所について質問させていただきましたが、何となく返答のし辛いイマイチな質問だったなと思い返しています。次があれば、巻き込み力やご自身の原体験あたりも質問してみたいな)。