keita_shimabの日記

京都在住Webディレクターのイベント参加メモや読書メモなど。

「QUM BLOCS 大阪」参加メモ

平日の午後(しかもその週は祝日があり営業日が少ない週)という状況ながらも、180名ものビジネスパーソンを集めた大規模イベント『QUM BLOCS』にちょっとだけ参加してきました。

www.qumblocs.com

 

主催は、"Re:Frame your company." をコンセプトに、企業の新規事業立ち上げや組織作り支援をしている株式会社フィラメント。

thefilament.jp

 

「日本各地にイノベーションの連鎖をつくる」をテーマにしたトークセッション。
課題のフロンティアである「地方」でビジネスを立ち上げたパイオニアが登壇し、その知見から学びを得て、新たな繋がりを生み、参加者全員のアクションにつなげることを目標にしたイベントです。

 

熱い想いと行動力を持ったパワフルな方々のお話が聞け、多くの気付きが得られたのは当然ながら、目の前のことに前向きに取り組もうというポジティブな気持ちになれたイベントでした(モチベーションアップを目的とした社員研修にも使えるんじゃないかと思えるくらい)。

 

オープニング

主催・フィラメントの代表、角さんによるオープニング。

オープンイノベーションといえばこの人、というくらい有名な角さんですが、元公務員という異色の経歴。
「楽をしたい」という想いから公務員になるも、とあることがきっかけで人生の転機が訪れます。

 

「生きる」とは
それはお子さんの誕生。愛する家族が増えたことをきっかけに「生きるとはどういうことか」について考え始めることに。
角さんが出したその答えは「世の中をよくする努力をする」こと、その努力をし続けること。
自分がこの世を去る時、自信を持って次世代にバトンを渡せる世の中にしたい。
この想いを胸に一念発起。公務員を退職し起業することになります。

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地方での仕事
大阪に留まらず日本全国に活動領域を拡げるフィラメント。
地方での仕事が増えていく中で、地方が抱える課題(人口減少、高齢化、労働力不足、経済や情報の格差拡大etc...)を目の当たりにします。
一方で、この課題に向き合いビジネスを立ち上げている「おもしろい人たち」との出会いも。

そういった人たちとの交流の中で角さんが感じたのは、地方とそこに関わる人々は可能性に溢れている。また、この人たちの繋がりを拡げることでその可能性は倍化するのでは?ということ。

それを実現するための場が、今回のイベント『QUM BLOCS』。

 

Session1「地域×サービス」そこで行われる新しいサービスの価値とは

モデレーターは角さん、登壇者はこちらの方々。

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 左から長井さん・下村さん・勝瀬さん風チコちゃん・近藤さん・田村さん

長井 伸晃 氏
神戸市企画調整局 産学連携担当係長

下村 祐貴子 氏
フェイスブック ジャパン株式会 社執行役員 広報統括

勝瀬 博則 氏
handy Japan株式会社 CEO

近藤 洋祐 氏
株式会社電脳交通 代表取締役

田村 慎吾 氏
関西電力株式会社 経営企画室 イノベーション推進G マネジャー

用意されている4つの質問にスピーカーが応えていきます(角さん曰く「“そこまで言って委員会”方式」※関西発メソッド?)。

 

Q1. その地域を選んだ決め手は?

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みなさんの答えは上記の通り。

 

▼「全国初」by 長井さん・下村さん

 フェイスブックジャパンは、SNSを活用した地方創生支援活動「地域経済・地域コミュニティ活性化に関する事業連携協定」を、2018年7月に神戸市と締結。行政との取り組みは全国で初だそう。

japan.cnet.com

 

Instagram最高製品責任者のケビン・ウェイル氏が、来日時に「地方でInstagramを活用しているところに行きたい」という話があり、IT活用に積極的だった神戸市を訪れることに。

2017年10月にケビン氏が神戸市を表敬訪問。神戸市のITを活用した経済活性化や雇用創出の取り組みを聞き、双方の方向性が近いことを確認。

神戸市は課題意識が明確でIT活用に積極的だったこと、ファイスブックジャパンは地域でのSNSの可能性を模索していたことから、「全後初」の取り組みが実現。

 

▼「両親が住んでいるから」by 勝瀬さん

限界集落に住むご両親。お父様が認知症になり、連れ添うお母様も鬱状態に。

当時 Booking.com社長だった勝瀬さんは、実家の古民家を上手く活用できないかと考えるように。

試しに外国人観光客向けに古民家を宿泊場所として提供したところ、たくさんの反響があり、「高齢者は観光で稼げる」と確信を持ち、会社を設立。国の補助金豊田市との提携等も果たし、立ち上げ2年で会社を軌道に乗せます。

お母様が運営される古民家の特長は「おもてなしをしない」こと。英語は話さない(話せない)、食事の提供もなし。あるのはお部屋の掃除のみ(※お風呂の掃除もしていたけれど、お母様の負担になるので提供無しに)。宿泊先が「日常そのまま」であることが、外国人観光客のニーズにもマッチ。

提供するサービスを減らせば減らすほど外国人観光客が喜ぶ。お母様の負担を減らせば減らすこど、満足度が上がるしくみを確立されました。

 

▼「インターネット」by 近藤さん

子どもの頃からネットに慣れ親しんだ世代。ネットを通じて世界中にアクセスできる環境では、物理的な制約を感じることがなかったとか。

そんなバックグラウンドをもつ近藤さんが起業を考えた時、周囲には「起業をするなら東京」という空気感があった。

ただ、規模をスケールさせるフェーズであればそれは有効(東京に集まる情報やコミュニティーは魅力的)だけれど、立ち上げ時ならネットがあれば地方でも起業はできると考え、地方で起業することに。

 

▼「受容性」by 田村さん

 2年前に開催したビジネスアイデアコンテスト『Dentune!!!』(私も参加してましたw)。ここで出たアイデアを元に事業化を目指し、電柱吊宅配ロッカーサービスの施行を実現した方。

www.kepco.co.jp

 

電柱を使った事業は、自治体が受け入れてくれるかがキーになる。

そんな中、京都がこの取り組みに積極的だったこともあり、プロジェクトが発足。京都府精華町電柱吊宅配ロッカーを設置することが実現しました。

 

Q2. 地域の人の反応はどうか?

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▼「通りがかりの人の反応は良かった」by 田村さん 

電柱吊宅配ロッカーサービスのテストマーケティング。工事をしている中で怪訝そうに眺める人はいるものの、何をしているのか聞かれた際には田村さん自ら一人ひとりに説明。

きちんと説明さえすれば、前向きな反応が返ってきたとのこと。

 

▼「極寒」by 勝瀬さん

古民家を活用したインバウンド事業。限界集略に年間 何百人もの外国人観光客が訪れる状況は、長年そこに住む人たちは否定的。騒音問題や治安を不安視する人も出てきて、「泊まっている人間の素性を明かせ」といった意見が出てくることも。

 

▼「他人事」by 近藤さん

近藤さんが代表を務められる電脳交通は、タクシー会社に対して24時間受付可能なクラウド型コールセンターを提供している会社です。

www.cybertransporters.com

タクシー業界自体がITに馴染みが無く、訴求しても中々刺さらない。

所謂「大人たち」が集まる場所で、地域のシャッター街の現状、ネット通販の台頭による “地域にお金が落ちない構造” の話をしても、大人たちはどこまでいっても他人事。

この反応には近藤さんも強い危機感を持ったそう。

 

▼「人による」by 長井さん・下村さん

SNSと行政との協業。これは市民のための施策であるため、色々なレイヤーに向けて情報を発信。反応は様々で、ビジネスレイヤーからはかなり反応がある一方で、シニア層の反応は鈍い。というよりも、facebookを使っておらず情報がリーチできない状況に。

 ただ、実際に使ってもらうと、すぐにヘビーユーザーになってくれる人も多く、とあるシニア層のグループでは毎日何かしら投稿がされる(いけばなの写真とか)までに。

 

Q.3 地元のキーマンが必要か?

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▼「他人に任せていてはダメ。結局は自分がキーマン。」by 勝瀬さん

紹介されたのがこの動画。

www.youtube.com

一人の男性が裸で踊っていくと、一人また一人と踊り出し、いつしか全員で踊っているという動画。

最初に踊っている男性はただ自分が踊りたいから踊る。それは周囲から見るとバカげて見える。ただ、踊っていると最初のフォロワーが現われる。最初のフォロワーが参加ハードルを下げることによって三人目のフォロワーが登場する。三人が踊ればこれはムーブメントになり、どんどんフォロワーが増えてくる。踊る人が10名を超えだすと、踊ることのリスクは無くなり、逆に踊らないことがリスクになる。

この動画は「最初のフォロワーが大事」というもので、勝瀬さん曰く「キーマンを探すなんて下品。いやらしい。探すぐらいなら自分がキーマンになれ」。最初に踊る人じゃないなら、最初のフォロワーになれ!という熱いお話しでした。

 

▼「長井」by 長井さん・下村さん

フェイスブックジャパンとの提携は多くのステークホルダーがいて、話しが決まっても実現に向けたハードルが残る。そんな中、旗振り役である長井さんがとてもつのない「やる気」を持っていて、そのおかげで事が動き出している、とはフェイスブックジャパン田村さんのお話。

ただ、長井さん曰く、前出の “最初のフォロワー” じゃないけれど、部署内に新しいことを面白がってくれる人がいて、そのメンバーの方々に背中を押されている、とのこと。

 

▼「探し方・見つけ方を教えてほしい」by 田村さん

電柱を使った新ビジネスを実現しようとしている田村さんは、他の方とは少しアプローチが違っていて、ざっくりとは「やってみてからキーマンを見つける」というもの。

ステークホルダーの同意が得られず、やりたいことの形が変わることもある。なので、キーマンを探して物事を進めるのではなく、とりあえず物事を進めてからキーマンを探す。

 

▼「ベテラン選手はよ来て」by 近藤さん

テクノロジー×タクシーで事業を立ち上げた近藤さん。電脳交通はプラットフォームビジネスのため、早くスケールすることが重要。

設立から3年目が経ち、いよいよ資金調達しようとした時、その知見が無いことや、(地方だからなおさら)相談相手もおらず、かなり苦労をされたとのこと。

事業を一緒にハンズオンするキーマンが欲しい、という切実な悩み?でした。

 

Q.4 このパターンを他の地域に展開できそうか?

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▼「展開できるモデルが大前提」by 近藤さん

電脳交通はもともと全国で展開できることを前提に事業を起こしたので、できる。

 

▼「やりたい」by 田村さん

今はまだテストマーケティング的に一部の地域でしか実施できていないが、もっともっと拡げたい。

 

▼「やる気」by 長井さん・下村さん

やる気が大前提。リーダー間で方針が決まっても、担当レイヤーになると動かないことが多い。担当レイヤーまで動かせるよう、リーダーの揺ぎ無いやる気が重要。

 

▼「地方創生は無理。個人創生ならできる」by 勝瀬さん

地方自治体の数は、現在約1,700。実は明治時代のその数は80,000。

移動手段が無い時代には徒歩圏内に自治体が必要だったか、テクノロジーの発展により、それがどんどん減っている。将来、地方自治体がなくなることは目に見えている。

地方の概念が無くなり、どこにいても一定の行政のサービスが受けられるようになると、大切なのは「個人」。個人の「どこで何をやりたいか」という想いが、より重要になる。

ただ、これは、自分ひとりが好き勝手にしていいということではなく、「個人」とは早親や家族、その次に街...というような自分の近くのコミュニティをひっくるめたもの。どんどん「個人」の輪が広がる状況において、地方自治体というものが意味を成さなくなる。

 

まとめ(まとめられないけど)

熱い想いと実際に行動を起こすみなさんのお話に勇気をもらえた気がします。

 

角さんがセッション最後の方に仰っていたのですが、VUCAの時代において「個人」の発信する情報の重要性が増していると。

 

このことは、先日参加した WIREDのイベントでも感じたし、QUMに参加して改めてそうだなと感じました。

 

その時代において、じゃあ私個人がどうあるのか...とういのは長くなるのでここには書きませんが(笑)、ばくっとは「他人に良い影響を与え続けたい」ということ。

これは、電通のコピーライター・日下さんの本に「他人に良い思い出を与える」と言うか表現で書かれていたことですが、他にも(同じく私が強い影響を受けている)Yahoo!アカデミア学長・伊藤さんの本にある「人は世の中をよりよくするために生きている」ということにも通じるように思います。

keita-shimab.hatenablog.com

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登壇された方々の活動は、周囲に良い影響を与えるものだし、社会をよりよくするもの。
実践されている方々のお話しを聞くくとで、より自分の想いを強くすることができました。

 

また、そういう志向性があるからかもですが、最初のオープニングで角さんが仰った「未来予測は悲観論が多くある。これに “世の中はどんどん大変な状況になる..” と反応するのは、反射でしかない。ここに人を介することに意味があって、人が介することで悲観は希望に変えられる」というお話しが、とても心に刺さりました。

 

「地方」というテーマはありながらも、「自分はどうしたいのか?」「自分はどう生きて生きたいのか?」について考えさせられ、またいくつかのヒントがもらえたようなイベントでした。

 

※他にもあと3セッションありましたが、私は中抜けしたため聞けず... #QUM #QUMBLOCS のハッシュタグを追って他のセッションの情報は集めます;涙