佐山展生さん講演会(京都紅葉の宴2018)
11月24日。Impact Hub Kyoto 交流会&講演会の参加ブログ後編。
スピーカーはM&Aのパイオニア・佐山展生さん。学生時代のお話からSKYMARK再生のお話しまで、ここでしか聞けない内容ばかり。
私なりの要約は以下3点。
- やるかやらないかの二択のみ
- やっていることは発信すべし
- 想像できる未来に意味は無し
内容もさることながら、要所要所に笑いを入れて聞き手を飽きさせないスピーチ術もあり、刺激と笑顔に溢れるあっという間の1時間でした。
佐山さんのお仕事
佐山展生さんはまだ転職が極めて珍しい時代に製造業から銀行に移り、そして投資ファンドが日本でまだ名を知られていない頃に創業。最近ではスカイマーク航空に投資し、代表取締役会長を務めています。
※以下イベントページから引用
スカイマーク会長・佐山展生さん登壇!! 人生は「面白そう」を追求する旅 ハートのある経営とは?
キャリアヒストリー
野球漬けの学生時代
中学・高校と野球漬けの生活。高校3年・夏の大会で常勝校と対戦。周囲の期待を裏切り勝利(新聞に大きく取り上げられる程、当時はビッグニュース)。
相手校との力の差は圧倒的に存在した。それでも勝てたのは「最後の試合なので“勝ちたい”という気持ちが強かった」から。
この時に「人間の能力差なんて大したことはない」と思うように。
言われるがままの人生。その中で分かったこと。
ご本人曰く「30歳まで全く人生について考えたことがなかった」。大学も就職も周囲に勧められるがままに進まれたそう。
帝人時代。工場に配属された時に壁にぶち当たります。設計通りの物が出来なかったり、マネジメントでとても苦労が多かった。
まずは業務理解を深めようと、誰に言われるわけでもなくフロー図を作成。当然分からないところが出てくるので、そこは周囲に聞きまくる。
それを繰り返していくうちに、とあることを発見されます。それは「案外、みんな分かっていない」ということ。
「これはこう」と事象を説明できる人はいても、なぜそうしているのか?なぜそうする必要があるのか?まで説明できる人、自分で納得するまで考えている人がいなったそうです。
ここから一転、仕事がとても楽しくなったとか(※このあたりのロジックは質問しそびれました...)。
ただ、大企業あるあるの出世競争に嫌気がさし、「大企業には自分は向かない」と思い始めます。
ついに転職を決意。「転職」が今のようになかった時代の大決断。しかも行き先は全くの畑違いである銀行。
メーカーから都銀
三井銀行(現・三井住友銀行)で、知識・経験ゼロながらM&A業務に従事。
NY勤務時にMBAの存在を知り、終業後の夜に時間を作って勉強することに。
ご本人曰く「やらない時は本当に何もやらないけど、やると決めたらとことんやる」。
この性格?もあり、4年制のカリキュラムを2年で修了。
大きな案件をこなし、やりがいも感じていた頃。ふと、ある質問を上司に投げかけその返答で退職を決意(※詳細は自粛しますw)。
日本初の大型バイアウト・ファンドを起業
「海外のものはいずれ日本に入ってくる」と、当時マーケットの無い大型バイアウト・ファンド「ユニゾン・キャピタル」を設立。
佐山さんのスタンスは「日本型ファンド」。
対して「アメリカ型ファンド」があって、これは投資家を最重要視すること。
一方で「日本型ファンド」は、働く人を最重要視する。持論は、売却とは「これまで培ってきた大切な経験を売る」こと。なので、売却先見極めのポイントは「高値で買ってくれるところ」ではない。
投資会社の設立からスカイマーク会長へ
2007年に投資会社インテグラル株式会社を設立。スカイマークの再生を実現し、同社 代表取締役会長に就任。
新生・スカイマークは独立系航空会社として、定時運航率・低欠航率 日本一を実現します。
TOPによる情報発信の重要性
全国各地の空港支社の社員とコミュニケーションをとっていく中で、「自分の考えや想いはここにいる人にしか伝わらない」と考えるようになります。
どれだけ自分の想いをその場その場で伝えても、社員全員には伝わらない。これは勿体ない、何とかしたいと考え、2015年10月から「さやま便り」という日々の活動や想いを綴ったものを毎週全社員に発信されています。
本紙の作成は3時間程かかるけれど、とても重要。前述の「定時運航率・低欠航率 日本一」もここで発信し続けたから実現できた、とのことでした。
佐山さんの考える、仕事・生き方のスタンス
配布資料は73ページの両面印刷。その中の30ページ以降は「結び」と題して、佐山さんが30代から書き足していっている、仕事や人生について想うあれこれが綴られています。
日めくりカレンダーとして売れるんじゃないかと想うくらい示唆に富んだ内容。講演会ではその中からいくつかピックアップしてご紹介いただきました。
人生は、自作自演のドラマ
会社や仕事の愚痴を言っている人がたまにいるが、その状態にいる(その状態を良しとしている)自分にも責任がある。人生のシナリオを作っているのは自分。そのことを忘れてはいけない。
「キャリアプラン」「ロールモデル」について
変化の激しい世の中において、キャリアプランを考えてもあまり意味がない。なぜなら、いま思いつく未来の状態なんて大したことない(未来は想像できないくらい変わっている)。
また、「ロールモデル」についても近い話で、ロールモデルは今の世界の中だけのモデル。手本になる具体像=すでに実現している人がいる。
得意領域をつくり、そこで勝負するべき
取り組むべきは、みんながやっていないことで、かつ「面白そう」なこと(「面白い」はすでに誰かがやっていること。それだと意味がない)
スタートが「面白そう」や「好きなこと」というのが大事。そのことがあれば何事もやり遂げられる。
あれもこれもと領域を拡げるのではなく、得意領域で勝負し、その後、領域を拡げた方が良い。
人事について。「ど真ん中の直球はストライクと判定されているか」
ストライクゾーンが明確で、そこに投げればストライクと言われるから一生延命に投球する。人事評価も同じ
要は、期待されていることを明確にし、その要求に対してアクションすべきだと(どんなに壮大で可能性があるアイデアでも、期待されている然るべきタイミングじゃないと、提案してもただの紙くず。と解釈)。
個人の「社内価値」と「市場価値」は違う
一般に、大企業は「社内価値」を高めないと生き残れないが、プロフェッショナル集団は「市場価値」を高めないと生きてゆけない。看板が無くなって初めて自分の「市場価値」に気付くことがないように備えよう
社内価値だけだとダメだけど、社内価値は高めないといけない(その次?に市場価値)。
知らないうちに富士山に登った人はいない(狙わないと獲物は獲られない)
あるレベル以上に難しいことは、「やる」と決めないとできない。そういうものを持っているかどうかで、その個人も会社も5年後、10年後の姿が違ってくる
富士山を登った人は、自宅の玄関を出る時には間違いなく「富士山に登る」と決めている。
いくつになっても、10年後より10歳若く可能性が大きい。
今の年齢に10歳加えてみると別世界。今、いかに可能性が高いかを実感
「歳とったなぁ」とボヤくのは死ぬときだけ。
まとめ
お話しの内容や、醸し出されるお人柄から「直感型」のような印象を受けますが、実はそうではなく、とてつもない判断力をお持ちの方なんだなと思いました。
「先のことは考えない。面白いと思ったことをやるだけ」とよく仰っていましたが、これは今想像できる将来像があることが、逆に可能性にキャップをかけることだというお考えからであり、それよりも「これはやる!」と決めて突進しつつ状況を捉えて柔軟に対応した方が良いということ。
また、突進する前には必ずリスクヘッジをとられていることも印象的でした。
進路にせよ就職にせよ、「失敗したらこれがある」という準備が常にある。これがあるからこそ「面白い」と思ったことに全身全霊をつっこむことができ、つっこむから得られることが大きいという好循環が産まれる。
とは言え、直感をとても大切にされている方だとも思います。
この「直観」についてはYahoo!アカデミア学長・伊藤さんのロジックが個人的には大好きなのですが、伊藤さん曰く、直感は経験からしか生まれない。だからいろいろ経験すべきだと。
つっこめばつっこむほど経験値が上がり直感力が研ぎ澄まされていく。研ぎ澄まされていけばいく程ジャッジも早くなりアクションを起こすスピードも速くなる(なんて人だ...)。
佐山さんのお話を聞いて今の自分との乖離に愕然としかけましたが、冒頭にあった「個々人の能力に差は無い。やるかやらないかだけ」という言葉を胸に、とりあえず明日から「歳とったなぁ」は禁句にします;汗