keita_shimabの日記

京都在住Webディレクターのイベント参加メモや読書メモなど。

「oikazeごはん〜秋の会〜」に行ってきました

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oikazeごはんとは
株式会社おいかぜさん主催の、お食事+トークイベント。2018年は株式会社坂ノ途中さんをパートナーとした、4回シリーズ構成。今回はその3回め。
旬の野菜を使ったおばんざいと、坂ノ途中代表・小野さんとおいかぜ代表・柴田さんのお野菜トークというコンテンツでした。

 

株式会社おいかぜ

京都(西院)に本社を置く、Webデザイン・構築・インフラ運用まで幅広く手がけられるIT企業。一般的な企業に加え、京都精華大学といった教育機関にもクライアントを持つ会社さんです。

株式会社おいかぜ

 

株式会社坂ノ途中
「100年先も続く、農業を。」をテーマに農産物の販売を行う会社さん。
一番の特長は、坂ノ途中さんで扱う農産物は、新規就農者の方が手がけられたものがほとんどであること(なぜ新規就農者なのか?これはとても良いエピソードなので、ぜひおいかぜごはんに足を運んで小野さんから直接聞いてほしい)。

坂ノ途中

 

おいかぜマルシェ
会場には物販コーナーも。oikazeごはんのチケットには、マルシェで使える500円割引券がついています(お得!)。

 

▽きものシェアクローゼット&サロン 水端
http://mizhana.com/
レンタルではなくシェアクローゼット。きものを楽しみたい、試してみたい人向けに、きもののシェアリングや着付けのフォロー、お悩み相談まで。


▽Maker

https://www.makerkyoto.com/
西院にあるレストラン。「メープルとハーブのスコーン」おいしくいただきました。


▽Take a nap Crackers

https://www.facebook.com/takeanapcrackers/
京都ローカルなあられを販売されているお店。パッケージもネーミングも秀逸。贈り物にも喜ばれそうです。

 

あとはもちろん坂ノ途中さん。トーク後には小野さんもふら~っと店先に立たれてて、来店者とお野菜トークをされていました。

 

oikazeごはんスタート
バイキング形式でおばんざいが楽しめます。メニューは1つ1つ、坂ノ途中スタッフさんにご説明いただけます。どれもおいしいものばかり!(心なしかいつもり噛むスピードが遅く、回数が多かった気がするのは、おそらく野菜の歯ざわりや味の余韻を楽しんでいたからなのか?)。

 

お野菜トーク
小野さんと柴田さんのお野菜トーク。これ、むちゃくちゃおもしろいです。これを聞けば、きっと野菜に興味を持ちます。

 

しいたけの話

栽培方法について

「ひょこ」っと傘を生やすしいたけ。あの傘が出てくるのは、木や菌床(※後述)に菌が行き渡り、「この木は菌でいっぱいになったし、次の木を探すか」と、胞子を飛ばすために「ひょこ」っと傘を出す。

栽培方法は大きく2種類。「菌床栽培(きんしょうさいばい)」と「原木栽培(げんぼくさいばい)」。生えてる場所が「菌床」なのか「原木」なのかの違い。

 

菌床栽培
菌床(オガクズなどの木質基材に米糠などの栄養源を混ぜた人工の培地)でキノコを栽培する方法。

菌床栽培 - Wikipedia

 

原木栽培
天然の木を用い木材腐朽菌のきのこを栽培する方法で、伐採し枯れた丸太に直接種菌を植え付ける方法。

原木栽培 - Wikipedia

 

世に流通しているしいたけのほとんど(9割?)が前者でつくられている。後者に比べると菌の行き渡るスピードが速く、木よりも軽く管理もしやすいため大量生産に向いている。
一方で、後者の方が美味とされています。小野さん曰く、(極端めに言うと)キノコの味は栽培期間に比例する。なので、原木でゆっくり時間をかけて育ったしいたけの方が美味しい。

 

菌の種類の話

しいたけの菌は「腐朽菌(ふきゅうきん)」。木を分解する菌。これがないと木は土に返らない。

木材腐朽菌 - Wikipedia
木が分解されず残り続けると石炭になるのだけれど、しいたけがこの世に誕生していなかったら地球は石炭だらけになってたとか(!)

 

他にも「菌根菌(きんこんきん)」があり、これは木を分解するのではなく共生する。この共生関係が人工的には作り出しにくい。例えば松茸などが菌根菌。

菌根菌 - Wikipedia

 

みかんの話

新規就農者は資金が足り苦しい。広い畑を確保するのが難しいので、比較的狭い面積で収益のあがるものを育てることになり、“野菜”が選ばれることが多い。


畑1反(300坪)あたりの収入を「反収(たんしゅう)」といって、反収がどれだけ上がるかがかなり重要。

 

ちなみに、反収が高いのはイチゴ。
ただ、イチゴだとビニールハウスなどの初期投資が必要だったり収穫には多くの人手を必要とするなど「経営」的な手腕が必要になるため、それはそれで参入障壁がある。

 

(少し話しは逸れて)お米は反収が低い。野菜と同じだけの収入を得ようとすると、広大な土地が必要。

そんな状況にもかかわらず、お米を栽培する人は減らない。

理由は、耕作放棄地がたくさんあって、土地が安く手に入る。しかもすぐに収穫できるような状態で。
なので、畑を買って潰して・買って潰してを繰り返すような輩(※意訳)も出てきているそう(「畑の居抜きですね」とは柴田さんのコメント。上手い表現だなぁ)。

 

話しを戻して「みかん」について。

 

みかんを育てるうえで重要なのは「水はけが良いこと」「ある程度日当たりが悪いこと」。

これを満たす条件が、山あいの斜面。
実はこの山あいの斜面にみかん畑を耕すのには他にも意味があって、斜面の畑は獣と人間との境界線の役割を果たすそうです。

そのため、みかん畑がなくなると獣が人里に降り、田畑を荒らし、ますます耕作放棄地が増えてしまう。

持続的な農業を目指す坂ノ途中さんにとっては、そういう意味でもみかん畑を耕すことの意味性がある。

 

野菜とみかんを育てる「二拠点農業」の提案

農産物には収穫できる時とできない時がある。夏は収穫できるけれど冬は収穫できない。あるいはその逆。そういったことは、農家あるある。

「それぞれを組み合わせると年間を通して収穫ができ、農家さんの収入が安定するのでは?」と目を付けたのが坂ノ途中さん。
夏は野菜・冬はみかんといった、季節によって畑を変える「二拠点農業」が実現すれば農家さんの可能性は広がる。坂ノ途中さんはそんな想いを実践し、検証されています。

瀬戸内柑橘だより | 坂ノ途中

 

お野菜トーク・質問コーナー

会場の参加者との対話を重要視しているこのイベント。小野さん・柴田さんへどんどん質問できます。
私は2つ、質問させていただきました。

 

なぜ「おいかぜ」はoikazeごはんをしているのか?

同業の私としては、なぜおいかぜさんがこういった食のイベントを開催しているのかに興味がありました。

 

いただいた返答は、ばっくりとは「自社コンテンツの運営」であると。

初期のイベントはもっと少人数でやっていたのだけれど、そもそものきっかけは、物理的に離れた場所で業務にあたる社員と顔を合わせる機会が減ったこと。

これではいかんと。
ちょうど月1の会議があるので、その時に「みんなでご飯を食べる」ことを始めてみた。
当初は社内の人間だけで開催していたけれど、実際やってみると色々な発見(この子こんなに気が利くんだとか)があったり、何よりも食事中は社員同士フラットで上下関係もなくコミュニケーションをとるうえで有効であることに気付き、少しずつ社外の人への参加も受け入れながら7年ほど運用してみた。
そうすると、「おいかぜさんってご飯の会社ですよね?」と言われるほど知名度があがり、「人に広まるとはこういうことか!」と発見があった。
普段の業務ではクライアントに「コンテンツが大事ですよ」とは言うものの、よくよく考えると自社でコンテンツを運用しているわけではない。
そんな中、いつのまにか世に知られている「oikazeごはん」こそがコンテンツであると解釈し、以来ずっと続けている。

 

小野さんが「ニガテな野菜」は?

最初は「嫌いな野菜は?」と質問しかけたけれど、そんなものはないだろう、と思い直し微調整。

いただいた返答は「糖度競争のトマト」。

トマトは本来甘みも酸味もあるものなのに、どんどん糖分をドーピング(※意訳)されている。その行為はどうかと思うし、そもそもその土俵で戦おうとすると、設備投資や管理体制の構築が必要になり、坂ノ途中さんでは勝負できない(したくもない※意訳)。

 

この答えには小野さんのポリシーが如実に現われていると感じました。

というのも、坂ノ途中さんの想いとして、「野菜を食べてそのブレを楽しんでほしい」ということがあります。
季節によって野菜の味は変わる。

例えば夏野菜を秋に食べると、夏に感じた美味しさはないけれど、それはそれで味わいがある。秋になり強いストレスを受けながら育った野菜には独特のクセがあり、その時にしか味わえない美味しさになる。その時々で何かしらの楽しみがある。
夏野菜を秋に食べ、そのクセを味わいつつ、夏の終わりに思いを馳せ、冬への変化を楽しんでほしい。

 

これはこれで野菜を自然体で楽しむスタンスの一つだなぁ...と思いながらお話を聞いていました。

 

他の参加者の質問にも歯に衣着せぬトークでお話されていました。曰く、有機栽培の闇の話が10,000個あるとか。全部聞きたいw

 

イベントに参加して感じたこと

3つくらいあります。

 

「話者」というコンテンツの強さ

ばくっとは、人から話を聞くというおもしろさ。小野さんのお話は探せばサイトに載ってるし、柴田さんのお話ももしかしたら探せる内容だったかもしれません。
でも、やっぱり直接当事者からお話を聞くと面白い。ちょっとしたしぐさや目配せ、立ち居振る舞いなど、ノンバーバール(話者に対して使う言葉としては矛盾しますが)な情報含め、どんどん話しに引き込まれる。話している人との距離感が近くなり、知らずのうちにファンになっている。不思議な感覚でした。

 

コンテンツ足るためのネタ
とは言え、誰でもそんな面白い話ができるかというと、そうではない。お二人に共通しているのは「自らの体験」から「自分の言葉」で話されていること。
こういうネタをもってこそ、聞き手を惹き付けることができる。

 

コンテンツたるための人間性
一方で、色々経験すればいいかと言うとそうではない。上手く言語化できませんが、「あ、この人好き」って思わせる雰囲気(力?)。これが何者なのか...分かりませぬ。

 

と、いろいろ書きましたが、「直接当事者から話を聞いた方が面白いよ。相性がフィットしたらファンになるかもよ」と、当たり前過ぎることを書いてしまいましたが、これは私の言語化能力の限界で、おいかぜさんのイベントにはいろいろとヒントや気付きが隠されているように感じました。

 

次は12月。調整して参加したいなー。