「未来を創る二つの顔 AI研究者トップランナー&企業Game Changer」参加メモ
2019年一発目のイベントは Singularity University Kyoto Chapterの 1周年企画。
このブログでは、二名のスピーカーのお話を一人ずつ、前編・後編に分けて紹介します。
Singularity University(シンギュラリティ大学)とは
シンギュラリティ大学とは、2018年10月に10周年を迎えたグローバルコミュニティ。
世界の大きな課題(Global Gand Challenges)解決を念頭に、10年で10億人の生活を良くするスタートアップを生み出す事を目的としています。
「シンギュラリティ」とありますが、人工知能やAIの文脈で語られるそれとは異なり、飛躍的に発展するテクノロジーをどう使いこなすか?どうやってこの流れに乗るか?をテーマにしています。
また、「University」とありますが、大学ではありません。
創設者は、あの人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏とXプライズ財団CEOのピーター・ディアマンティス氏。
本部がある場所はシリコンバレー、NASAの敷地内。「Google創設者のラリー・ペイジ氏が自転車で立ち寄るような環境」だとか。
2人のスピーカーによる「eXponenital Talks」
今回のイベントは、ビジネスとアカデミアの異なる分野から、二名のスピーカーが登壇。
一人めはANAで新規事業を立ち上げた津田さん。二人めは著書多数(ドミニク・チェンとの対談も!)の中島先生。
「ANA出島式」ラディカル未来創生
津田 佳明さん(ANAホールディングス デジタル・デザイン・ラボ/チーフ・ディレクター)のお話し。
ANAで『破壊的イノベーション』を起こすことをミッションに、新組織「デジタル・デザイン・ラボ(DD-Lab)」を2016年4月に立ち上げ。
DD-Labの立ち上げ経緯や活動内容などをお話しいただきました。
ANAのベンチャースピリットを体現(再現?)した治外法権的組織
今でこそ大企業イメージのANAですが、創業した1952年当時はヘリコプター2機と16人の社員で構成されるベンチャー企業。
その後、60年以上の歳月をかけ国際線事業への参入や全席アクセス可能なレイアウトの導入、自社にとって破壊的存在であるLCCの立ち上げなど、様々なチャレンジを行ってきました。
航空業界でのポジションを確立した一方で、“いつも通りであること”(航空事業の至上命令は「安全運行」)が徹底され、イノべーティブなマインドが持ち辛くなるように。
その中で、今の延長線上にはない新しいことに取り組む“挑戦”を実践する部署として立ち上がったのがDD-Lab。航空事業とは完全に切り離したかたちで、ミッション遂行を目指します。
逆ピラミッド組織
DD-Lab在籍者のうち、ANA出身は数名。バックグラウンドは様々。
色々な人がいる中で、みんなそれぞれやりたいことをやる。
TOPである津田さんはその実現のための調整・サポートに徹するマネジメントスタイルだそうです。
▼参考:ANA・DD-Lab流マネジメント術
DD-Labの取り組み
『破壊的イノベーション』を実践するにあたって、「誰が自分たちにとって破壊的(Disruptive)な存在なのか?」を考えたところ、答えは某猫型ロボットの移動扉。これがあると飛行機は必要ない。
これは所謂「テレポーテーション」のことで、実現に向け東大教授の下に相談に馳せ参じるも、実現までにはあと100年程かかる見積りだとか。
100年は少し先過ぎるので、もう少し現実線で検討し、取り組んでいるのが以下4事業。
2.については、動画撮影や航空機設備点検への活用、「空飛ぶクルマ」官民協議会への参画などが進行中。
3.についても、アストロスケールといった有力宇宙ベンチャーへの出資や、宇宙ビジネスコンテストへの参画などを実現。
4.については、飛行機すら必要としない?旅先にいなくてもそこにいる体験ができるアバター技術を2022年ローンチ目標でプロジェクトが進行中。
さらにこちらについては、2022年を待たず、例えば耳や目や手といった1つ1つの技術を分散させて社会実装することも視野に入れているそうです。
▼参考:アバターに関するイメージムービー
これ以外にも赤ちゃんが泣かないヒコーキや乗ると元気になるヒコーキなど、規定路線に囚われない、自由な発想でかつ社会実装可能なイノべーティブな活動を実践されています。
DD-Labの「成功」の定義は?
これはナビゲーターのJunさんの質問ですが、この質問に対する津田さんの解答は「無い」。
(とある目標を立てて、それを達成した状態を「成功」とするのであれば)DD-Labは短期的な目標を掲げるような組織ではないため、「成功」の定義が無い。
仮に「成功」した状態が定義できるような目標を立ててしまうと、目標から逆算したマインドやアウトプットになってしまい、イノべーティブさを欠いてしまう懸念があり、それは本意ではない。
まとめ
津田さんのアクションは、全てがロジカルで共感値が高いと感じまいした。
ここでいうロジカルとは、想いと行動がまっすぐ繋がっているということ。
自社が今どういう状況で、将来どうあればいいのか?そのためには何が必要で、どういうロードマップを描けばいいのかを考えながら実行に移す(航空事業(屋台骨)とは切り話した場所で未来を創る組織を立ち上げ、未来を創る場所では「自由」を重んじ、調整役に回る)。結果、従来のANAにはなかったイノべーティブな事業が生まれる。
現状維持は即ち死を意味し、提供するサービスなり取り組みなり、何かしらアップデートすることが必須な世の中。
新規事業を立ち上げる立場にあろうとなかろうと、津田さんの「実践者」としてのお話しは非常に興味深く示唆に富むものでした。
今回は事業活動に関するお話が中心だったので、次にお会いできるチャンスがあれば、もっと津田さん個人のお話も聞いてみたいなと思いました(※少しだけ直接お話しするチャンスがあり、ご自身のモチベーションの拠り所について質問させていただきましたが、何となく返答のし辛いイマイチな質問だったなと思い返しています。次があれば、巻き込み力やご自身の原体験あたりも質問してみたいな)。